山崩れの風景

この庭 (路庭) に使われた石は主に個性が異なった木曽石、鳥海石の計三十三トン。手で抱えられる五十センチ位までの石を無作為に転がし、山崩れが起こった後のような自然な風景を描くことを試みた。集合住宅であるにもかかわらず獣道のように凸凹(隆起)した通路は、真砂土とセメントを混ぜ合わせたコンクリートの洗い出しで、その表情をつくるために左官ゴテは用いず、足で踏み固めて仕上げた。建物をくぐる二本の通り抜け通路だけは平に仕上げ、大ぶりな一枚の鉄平石と表情豊かな岩目の恵那石を埋め込んだ。三方向から通りが交わる中心の場所には、自由に転がったゴロタ石がだんだん密になり、目地を合わせながら収まる。その不自然な均一性に人はどのような自然を感じるのであろうか?
自然を描く作業の仕上げ、完成。これほどまで掃除一つにしても手を止める時が難しい経験は初めてであったが、庭の自然感を一歩進めて考える良い試みであった。

自然な庭、不自然な庭。 2018年 5月